☆ こんなところです。スペインのグアダラハラのシグエンサの・・・


  

施設の名前は、エルマノス・マリスタス。もとは修道院(修道所?)だったそうな。今は宿泊設備である。
マドリッドから国鉄で北東に約2時間。グアダラハラ地方のシグエンサという町のはずれにある。
体育館や演奏会用ホールも併設する。

高原地帯で日中は30℃を越す日もあるが、暑さは感じず決して汗もかかない。朝晩は寒いくらいに涼しい。
そして極度に乾燥している。
天の川もくっきりと見えるほど星空が美しい。流れ星をいくつも見ることができた。

シャワー、トイレ付きの個室が与えられ、ここで2週間過ごすことになる。

<写真>
左 : 施設の遠景。山にはほとんど樹木がなく。川沿いに主にシープレスの木が植えられているのがこの地方の特徴。
中 : エルマノス・マリスタスの正面。エルマノスとは兄弟、マリスタスとはキリスト教関係の集団のひとつ。
右 : 作業場。20名の参加者にはそれぞれ作業台と補助テーブル(写真には写っていない)が与えられる。


☆ 先生方の紹介

  

左 : ホセ・ロマニリョス(いちばん左の人) 地元新聞の記者の取材に応じている。ちなみに手にしているのは私のギター。
世界屈指のギター製作家。みんなにホセと呼ばせる。
気さくで優しく知的な人。イギリス流のユーモアセンスもお持ちである。自分のことをロマニージョスと発音する。
シグエンサの隣のギホーサという村に奥様とお住まいだ。

中 : リアム・ロマニリョス(右側の人) ホセの息子さん。裏板を接着するのにヒモを掛けている。左はドイツのアンドレアス。
この製作コースの運営リーダーである。海千山千の参加者を相手に2週間奮闘された。
リアムはイギリス南部に居をかまえてギターを製作しており、日本のギターショップにも卸している。

右 : スチーブン・リース(右の人) イギリスの製作家。永く写真家をしていたと話してくれた。14歳で最初のギターを作ったそうな。
わかりやすい英語を話してくれた。自分と同年代ということもあってよく話をした。ナイスガイだ。愛称はスティーブ。
彼のギターも日本のショップに置いている。「日本に行ったときは連絡するよ」と言ってくれた。

このほか、ホセとリアムの奥様方も重要なスタッフである。全員もれなくお世話になったことだろう。
私などは町までタバコを買ってきてもらったり、絵葉書を出してもらったり・・・



<ホセのスナップ集>
 


☆ スペイン式の伝統生活パターンとは


シグエンサの施設では一般的なスペイン式生活パターンで運営された。
日本との時差は7時間(夏時間)。日の出は7時前で日の入りは夜の9時ごろだ。
日照時間は同じようなものだが、時刻が2時間ほど遅めに設定されている感じ。

朝食は9時。ちょっと遅めか。パンと名産の美味しいハム、チーズ、シリアル類、コーヒー、ミルク、ヨーグルト、トマト、果物のバイキング。
ちなみに自分も含めて比較的年長組は朝飯前にひと仕事をするのが通例だった。

昼食は14時から。ここでは昼食をディナーと呼び最も豪華である。毎日ほとんど違うメニューで、すべてスペイン料理でまかなわれる。
どの料理もほんとうにおいしい。アセイテ・デ・オリーバ(オリーブ油)とアホ(ニンニク)がベース。
魚もフライや煮物で出るが肉類が圧倒的に多い。野菜が少ないかわりに豆類が多い。
そしてビーノ・ティント(赤ワイン)の角ボトル。おかわり自在だ。これがまた濃厚で私の好みときている。

これで仕事ができるのか?とお思いだろうが、それは本人の自由かつ責任。
昼間っから酒?といぶかる考え方は、後で周ったアンダルシア地方やバルセロナでもかいもく感じられなかった。
食事のあとは例の 「シエスタ」。まあ長めの休憩というか、酔い覚ましというか。スペイン独特の習慣。
町のお店や会社も14時から17〜18時ぐらいまではシャッターを降ろす。銀行にいたっては14時以降(13時のときもある)はもう閉まる。
スペインを周遊するときはこのシエスタを常に意識しておかないと、思わぬ事態になることがあるので注意されたし。

この施設でもももちろんシエスタ有りだ。
18時ごろまで昼寝していても一向にかまわないし、マウンテンバイクで町まで行ってもOK。もちろんすぐに作業台に戻る人もいる。
自分は、F君とサイクリングしたり近くの山に登ったり(のちほど紹介します)、洗濯したり、昼寝したり。でも大抵はすぐに作業台についた。
ちなみに十分睡眠したときには "good morning" あるいは "おはよう" と声がかかる。

夕食は21時から。昼に比べると軽めとはいえ、基本量が膨大なのでまともに食べていると必ずカロリーオーバーになる。
まだそんなにお腹がすいていないのに夕食となることが多かったが、美味しいのでひととおり口に入る。もちろんワインもいっしょに。

食事の後も製作は続く。先生方も付き合ってくれるが、基本的には外で「夕涼み」をされる。
このときこそ先生方と「会話」をするチャンス。最初はおぼつかなかったが、徐々にお話しができるようになった。
特にスティーブとはよく話をした。
マエストロ・ロマニリョスに何を聞き出したか? ・・ そのうちさりげなく紹介しょう。

だいたい0時前後で終える人が多いが、そのあとも続ける常連さんもいたようだ。
昼間にたらふく飲み食いして思いきり休んで、そのぶん夜中や朝に気合を入れるのがこの国のやりかたのようだ。


 ☆ ここでちょっと製作風景など

今回の参加者は20人。うち日本人2名。あとは、スペイン、イギリス、ドイツ、USA、オーストラリア。
女性もローラさん(USA)が参加。彼女は日本の最高級の突き鑿やケビキなどを見せてくれた。カメラもNikonの頂点に君臨するカメラ。
そしてオーストラリアの青年ショーン・ハンコックは既に日本の有名ギターショップに楽器を置いている。



ローラさん





1.                           2.                             3.
   

1.ロマニリョスさんのレクチャー  要所要所でみんなを集めて実演しながら説明してくれる。
この写真はロゼットの埋め込み工程。英語とスペイン語。
楽器用材の木取り方法や選び方など、興味深く拝聴した。
そして大切な一言は、"Never compromise"

2.相棒のF君の力木を成型しているところ。F君の表面板材は堅くて引き締まったすこぶる良材であった。
これの調整にはロマニリョスご本人がカンナを持った。
何をどうしたか詳細は省くが、ずば抜けた響きのサウンドボードが出来上がった。
完成後、真っ先に見せてもらおう。

3.ロマニリョスさんお気に入りのハンドサンダー   「最後はこうやって厚みを調整しなさい」と教えてくれた。
手にしているハンドサンダーを、「これ、なかなかいいネ。これはスグレモノだよ」とえらくお気に召した様子。
その日以来、何度か手にとっては「ほほうなるほど、よくできているな」てな具合。
このスグレモノは記念に進呈させてもらった。


4.                      5.              6.                       7.
   

 

4.フレッドのカラークリップ  英国人のフレッドは今回で5回目の参加を誇る。日本人の親友がいるそうだ。
ウイットたっぷりの話をよくしてくれるのだが、だんだん早口(本来のスピード)になってきて肝心の「落ち」の部分を聞き逃すこともあった。
写真は横板のライニングをクリップでとめているところ。カラフルできれいだったので一枚撮らせてもらった。

5.イエンスはプロ作家です  ドイツからクルマで来たイエンス。そのクルマには自作のバイオリンやギターがでかでかとプリントしてある。
イギリスでも製作を学んだ彼の仕事ぶりはドイツのマイスターそのもの。
ワインとビールで真っ赤になりながら仕事をしていた。写真はバインディングの溝を彫ったところ。「どんなもんだい!」

6.巨漢で好漢のアンドレアス 私のことを「TOSHI」と呼ぶアンドレアスもドイツ人。なぜかドイツの人とは気が合った。
普段はアコースティックギターを作っているそうだ。今回クラシックギターに初挑戦だが、さすがに仕事が速い。
今まさにバインディングの溝加工をしているところ。彼はすべてノミで仕上げた。顔が見えないがなかなかの美男子である。

7.箱になりました   私:「どんなもんでしょうか?」  ホセ:「いいんじゃないのぉ」   F君のショットです。ありがとう。


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