2010テジョン国際ギターフェスティバル出展&ソウル観光レポート

Daejeon International GUITAR Festival
       韓国大田広域市 文化と藝術センター
       2010/11/26 〜 11/30



今回で3回目となる韓国大田市(テジョン)のギターフェスティバル、名実ともに国際化されていました。
ギターコンクール、製作展、コンサートなど、昨年にも増して盛りだくさんの内容でした。

     【 参加者 : 日本人 】 【 日本以外 】
コンクール部門 Jin-ichiro Inoue , Gensuke Kanki , Hiromi Funatsu , Jyunpei Ohtsubo ロシア2 、 タイ2、
インドネシア1 、韓国16
デモコンサート演奏者など Teruo Horiuchi , Takeshi Hashiguchi , Daisuke Tsukioka ,
Syouken Ohshiro , Shin Yonamine , Tomoe Taira
ボスニア1 、韓国11
製作家 Masabobu Matsumura , Osamu Nakayama , Yasuyuki Abe ,
Toshihito Maruyama , Toru Nakamura , Toshiaki Yagi ,
Toshinobu Matsutani , Madoka Tsukioka , 'ASTURIAS' Shotaro Kido
カナダ1 、ブラジル1 、
ドイツ1 、 韓国18
私たちひとりずつに日本語が話せるボランティアさんがついて、本当に親切にサポートしていただきました

■会場 : 昨年同様 Culture & Art Center

  ホテルとの往復は2日間とも大きな観光バスを手配してくれました。







■筆者のブース

 今年作の630mmのトルナボス付きモデルです。

 パネルに貼っているA3大のプリント(韓国語)は当局で作成してくれました。







■グレゴリオ・チョ さんのブース

  筆者が最も気持ちよく響くと感じたギターです。(特に左の杉トップのほう)

  彼は今年もフェスティバルのディレクターで、大活躍でした。
  
  大学からの音響解析の研究者。解析データによって力木を削ります。
  その結果、音の曇りが除去されて実にバランスのとれた
  伸びやかな響きに生まれ変わります。

  私のギターを別の静かな部屋に持って行ってレクチャーしながら、
  データを採ってくれました。

  彼の音響解析とギターのチューニング方法は後述しています
■松村雅亘さんのブース
  
  2010年作のハカランダモデル。
  騒々しい会場内でもよく通る音。その一方、優しさも感じました。
  
  松村さんは今回も日本側のリーダー、事前の交渉や様々な手配など
  ほんとうにお世話になりました。




■James Frieson さんのギター

  札幌在住の作家です。ずっとメールでの友人でしたが、今回面会が叶いました。
  
  彼のギターは外観も音もエレガントでした。
  真っ黒なハカランダに象牙のバインディングと象牙の口輪、実に見事な細工です。

  ギターを作る前からのセラック塗装のプロでした。さすがに完全無欠な塗装でした。
  その塗り方の奥義を懇切丁寧に教えてくれました。
■Moon-seok Choi さんのギター

 裏板がなんとダブルになっています。

 端材の継ぎはぎにサウンドホールみたいなのがあけてあります。
 見慣れてくると、徐々に妙な美しさを感じました



■DongSoo Choi さんのギター

 韓国の伝統パターンをモザイクで裏板と横板にあしらっています。
 会場内で間違いなく一番手間のかかったギターでしょう。
 ちなみに、木片はシアノアクリレート(いわゆる瞬間接着剤)で接着したそうです。

 向こう側に見える綺麗なカエデのギターも彼の作品で、
 こちらのほうは中身が凝っていました。いい音がしてました。


■展示会場

 ホールの3Fにあります。筆者も半数以上試奏させていただきました。










■たくさんの方に試奏していただきました
   
 写真左から  ドイツのコッホさん(コンクールの審査委員長) 、橋口先生 、韓国のギタリスト、韓国の製作家

コッホさんには、「こういう伝統的な楽器が好きだ」 と特に気に入っていただきました。
コッホさんは来年の5月、友人のイタリアのステファノ・グロンドーナ氏を招いてドイツのハノーヴァーで、
演奏会とマスタークラスを開催するそうです.。是非にとお誘いいただきましたが・・・どうしよう・・・行きたいなあ・・・。


               
■ 展示ギターのデモコンサート (クリックで拡大)
 

グレゴリオ・Choさんの
ギターを弾くアレンさん

私のギターを弾く
大城先生

中村通さんのギターを弾く橋口先生

松村さんのギターを弾く堀内先生

阿部さんのギターを弾く大城先生
隣接の小ホールで二日間にわたって展示ギターのデモコンサートが行われました。

演奏者の方々は、韓国に来て初めて手にする楽器の性格やスィートスポットのようなものを、
短時間で探り当てておられました。さすがです。

そして、ステージでの楽器との一体感、素晴らしかったです。
  
■ボランティアさん

 通訳や身の回りの世話、時には宣伝までしてくれました。しかも専属なんです。カムサハムニダー!





■集合写真です
 カメラマンが大勢いるので、みんなの目線がバラバラ。


■大ホールでのコンサート

 フェスティバル期間中は毎晩コンサートが開催されました。
 このうち、 Arco Diabolo Chamber Orchestra と ギタリストとの共演を聴くことができました。

     モーツァルト ディヴェルティメント Nr.3 ヘ長調 KV138

     テデスコ ギター協奏曲 No.1 ニ長調 Op.99 全曲
        ギター Javier Somoza (Spain)

      ロドリーゴ アランフェスの協奏曲 全曲
        ギター Daekun Jang

     ヴィヴァルディ 2つのギターのための協奏曲 ト長調 RV.532
        ギター Daekun Jang & Javier Somoza

 異国で昂っているせいもありますが、素晴らしい演奏で大感激・大興奮でした。
 特にアランフェス。オーケストラはそれなりですが、ギター演奏でこんなに余裕を感じたことは未だかつてありません!
 
 千人近いと思われる聴衆のほとんどが若い世代でした。
 こういうコンサートでは、日本ではまず見かけない状況だと思いました。

 
■パンフレット

   コンクール版 と コンサート・製作展版 の2種類が制作されました(クリックで拡大)
   


■国際ギターコンクール

  優勝者はタイの Ekachai Jearakui さん、2位は韓国のYehyun Leeさん(写真右)でした。 こちらに当局の関連記事。

  ちなみに優勝賞金は 6百万ウオン(5,000USD) 、 商品は7百万ウオンのギター(Lee Hyoug-Kyu作) で、
  次年度のフェスティバルに演奏者としての招待が約束されます。

 

■次回のフェスティバル

  来年2011年10月の開催が決まっています。助成金がさらに上積みされるそうです。
   


■ソウルでの一日
 
 テジョンが終わってから、今年もソウルで一日を過ごしました。
 ギタリスト橋口先生のソウル在住の友人がソウルを案内してくれました。行き先は景福宮とその周辺でした。(クリックで拡大)



■お別れ会

 松村雅亘さんの部屋で夜遅くまで交流を深めました。その写真のごく一部を紹介します。
 ホテルは昨年と同じく江南の Coatel でした。



■番外編

ギターの持ち込み   昨年のASIANA航空は席が空いている場合は持ち込めましたが、今年の大韓航空は行きも帰りも機内持ち込みは叶いませんでした。
そのかわり、ベルトコンベアは使わず入出荷とも丁寧に扱ってくれました。
  金浦空港からソウル駅   偶然というか運よく国際タクシーに乗れました。値段は一般タクシーと同じです(つまり模範タクシーより安い)。
このタクシーのドライバーは日本での滞在歴があって微妙なニュアンスまで伝わるほど堪能な日本語でした。
ソウル駅ではみんなのKTXのチケットまで並んで買ってくれました。もちろんお礼など要求しません。
旅の最終日、ホテルから空港までの移動もTELでお願いしました。この安心感は大きいです。今後もソウルでは大きな味方になってくれそうです。
KTX(新幹線)について テジョンまでは自由席でした。
入口も出口にも改札がありません。車内でもチェックしなかったです。なので、その気になれば自由席なら悪さもできますが、
「そんな悪人はわが国には居らん」というシステムなんですね。性善説の国。
気   候 ソウルもテジョンも地元奈良の真冬なみかそれ以上の寒さ(冷たさ)を感じました。最終日には雪も見られました。
そのかわり部屋の中は暖かくて、暑いくらいでした。床暖房って効くんですね。エアコンは全く不要でした。


■グレゴリオ・チョ さんのギター音響解析と製作への適用について

◎必要機材
 ノートパソコンに小さなマイクをつなぐだけです
 完成したギターを正確に調弦しておきます

◎データ採取方法 ・・・ 次の A)、B) 2種類のデータを採ります

A) ティンパニのバチのようなもので、駒の直下をタップします・・高音側、中央、低音側
   このとき弦間に板を差し込む等して振動しないようにミュートしておきます。
   マイクは20cmほど離して空中で音を拾います。
   同様に裏板をタップして音を拾います。裏板は上、中、下で音程が違うので
   それぞれサンプリングします。

B) 弦を解放して実際に弾いて音をサンプリングします。
  弦が6本 x 12フレットぶん = 72 個になります

以上、音のサンプリングには特別のソフトは不要です。
◎データの解析 ・・・ 特別のソフトが必要です。フリーソフトもあります。

A)のデータ
  各所をタップしたときの最強の周波数を読み取ります
  この周波数が、演奏で使う音程(周波数)とぴったり一致しているとNGです。
  例えば筆者のギターの表面板のタップ音実測値のひとつは215Hzでしたが、これは3弦2FのAの音(220Hz)と1FのG#(207.7Hz)の中間にあるのでOKと判断します。
  すべてのタップ音についてこれをチェックします。

B)のデータ
  このデータから弦振動の質と長さを読み取ります。上の写真の波形がそれを示します。横軸方向に波が13個あるのは、開放弦+12フレットぶんの音です。
  コブがなく綺麗に減衰しているとOKです。そしてこのコブをなくせば、振動の持続も長くなるといいます。

◎いよいよギターをチューニングします
  ここまでの測定は実は筆者も行なっていましたが、実際に楽器に手を加えるのが彼ならではの技術です。
  サウンドホールから手を入れて力木を削ったりサンディングするわけです。そして再びデータをサンプリングしてチェックします。
  場合によっては表板や裏板をサンディングします。これを納得するまで繰り替えします。
 
  どこをどれぐらい削るかは、やはり勘と経験だそうです。
  上の写真の手書きで○印しているところを見るとよくわかります。上の波形がビフォー、下がアフターです。

  この方法でギターのチューニングを依頼されることがしばしばあるそうで、必ず良くなるよと彼は断言していました。
  
  親切なことに私のギタ-のデータを採取してくれました。
  その結果、A)もB)も特に修正するところがなくて、「well balance, very good」と云ってくれました。
  これからも、データを送れば解析してあげるよと約束してくれました。
  彼にとっては、最悪のデータを示すギターほど興味があるようで、そんなギターは研究課題として最高なんですよといっていました。

  彼のギターの素直な響きは弾いていて非常に気持ちが良かったです。ホールで聴いた時もオルガンを想わせる和声感がありました。

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